「恋しくて TEN SELECTED LOVE STORIES」村上春樹 編訳 中公文庫 

  • 2017.03.01 Wednesday
  • 23:26

JUGEMテーマ:活字中毒〜読書記録〜

村上春樹が自ら選んで翻訳したラブストーリー9編と、村上春樹自らによる作品1編の、計10作品からなる短編集。

実際のところは定かではないが、村上春樹訳の作品だけでは売れ行きの面で少し弱いので、村上春樹の新作短編を入れればもっと売れるだろうといった思惑が働いたのではないかと勘ぐってしまう。

 

その村上春樹による短編だが、題名は「恋するザムザ」。

詳しい方は読む前に想像がつくのだろうが、私は読み始めてからやっと気づいた。

あれ、これってカフカの「変身」の逆?

「変身」では人間が虫状の生物に変身するわけだが、こちらは変身して人間になってさあ、というところから始まる物語。

「変身」の主人公の名前がザムザということを、この作品を読み終わってから確認した。

「変身」は読んだことがあったが、主人公の名前までは憶えてなかった。

ともかくヘンな作品というのが正直な感想、面白くなかったとは言いませんが。

 

翻訳の9編は、ストレートなものから、屈折したもの、さらには同性愛ものまで、時代を含めてかなりヴァラエティにとんだものとなっている。

9編の中で、面白さは別にして、私が一番印象に残っているのは「恋と水素」という作品だ。

『恋』と『水素』という結びつきだけでも心に引っかかるものがある。

舞台は1937年、ドイツの飛行船の中、愛し合う二人はともに男だ。

この時代のドイツである、当然ナチスの統治下。

ナチスといえば、その思想から同性愛は許されないものだった。

飛行船内で逢引きする二人は、その結果として何をもたらしたのか。

で、水素です。

 

10作品にはすべて村上春樹による恋愛甘苦度判定がついている。

甘味も苦味も★五つが最高度、足して五になるように★は振り分けられている。

例えば最初の短編「愛し合う二人に代わって」は、甘味が★★★★、苦味が★といった具合。

自分の判定とずれていることがよくあった。

こんなもの人それぞれだと開き直っている。

 

ちょうど村上春樹の長編小説が刊行されたばかり。

たぶんそのうち読むとは思うが、そのうちが数か月後なのか3年後なのか、はたまたもっと先なのか。

ちょっと評判を探るところから始めようかなと思っている。

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