当時のモヤモヤを思い出す

  • 2020.10.01 Thursday
  • 22:10

「言葉尻とらえ隊」 能町みね子 著 文春文庫 読了。

 

ひと月ほど前のことだ。

行きつけの書店に行くと、新刊の文庫とサイン本を中心に能町みね子コーナーができていた。

2週間後にこの「言葉尻とらえ隊」をその店で買ったのだが、その時もコーナーは維持されていた。

そこで店員に、なんで能町みね子推しなのか訊いてみると、近所にお住まいみたいですよとの返事だった。

さすが中央線カルチャーの一翼を担う街だけあって、いろんな方が住まわれている。

いつかその辺で遭わないかな。

 

ともかく9月の新刊の文庫は「そのへんをどのように受け止めてらっしゃるか」という題名で、週刊文春に「言葉尻とらえ隊」という名で連載のコラムを集めたものの第3弾になる。

第1弾が連載タイトルそのままの「言葉尻とらえ隊」。

しつこいようだが、私は続きもの・シリーズものは最初から読みたがるもので、第1弾から読んでみた。

 

どうでもいい話かもしれないが、この題名は『うしろ髪ひかれ対」を意識してつけられたのだろうか?

 

『言葉尻を捕らえる』の意味を調べると、「本質でない事項について言及する もしくは ささいな間違いを大きくとらえて相手を非難する」(Weblioより)とある。

ネット等で見つけたひっかかった言葉を素材に、批判や皮肉を交えて、ああだこうだ書き連ねたコラム集といいだろうか。

週刊誌連載という性格上、時事的な話題も多く、そういえばこんなことがあったなあとか、これってこの年だったんだあと懐かしさを覚えることもあった。

なお連載の時期は2011年11月から2014年5月までの約2年半。

 

わたしもこの言葉にひっかかるんだよなあというのも多く、特に激しく同意できるものをいくつか挙げてみる。

まず『バッシングが吹き荒れないことを祈るばかりだ』の項。

著者に言わせればこれは、「(書き手や話してが)バッシングしていることを悟られないためのセコいまとめ技法」。

私も同意する。

特に新聞にこの使い方が増えてきているように感じる。

政治家の問題発言を受けて「この発言は物議をかもしそうだ」と書いてあったりする。

問題発言だと思うなら問題だと書けばいいところを、第三者のような体で直接批判が来ないようにしている。

こういったセコいテクニックを受けての、このコラムの終わり方は皮肉が効いている。

まさに言葉尻とらえ隊。

 

続いて『妊娠はしていない』。

いつからか芸能人の婚約・結婚が発表されると、記事の最後は『なお妊娠はしていないとのこと』といった文で終わるようになった。

そんなことどうでもいいじゃねえかよと思うものの、実はその7か月後に早産で生まれたが母子ともに健康とかいった記事が出たりする。

わかってて書かないのかねえ。

 

最後に一番よくぞ取り上げたと思ったのが『サラリーマン川柳』の項。

数年来、なんでサラリーマン川柳をみんなうれしそうにニュースやワイドショーで取り上げるんだろうと不思議だった。

著者も書いているが、上位に来る川柳の内容たるや昭和のサラリーマンの愚痴を十七文字にしたようにしか思えない。

サラリーマンはみんな新しいことについていけない機械オンチなのか?

女房と子どもに馬鹿にされているのか?

優秀作を見てこの気持ちわかるなあとかいうコメンテーターがいたら、頭が古いから信頼はしないようにしようと私だったら思ってしまうな。

 

このシリーズを少し間をあけながら読み続けていく予定。

能町みね子は、連載媒体である週刊文春の言葉尻もとらえてしまう。

こういった著者なら私は信頼する。

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