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    洒落にならないほど面白い

    • 2019.09.12 Thursday
    • 22:13

    「そしてミランダを殺す」 ピーター・スワンソン著 務台夏子 訳 創元推理文庫 読了

     

    昨年かなり話題になった翻訳ミステリ。

    このミスでも文春でも海外部門第2位だった。

    どちらも1位は「カササギ殺人事件」で、単純に相手が悪かった。

     

    おそらくこんなことを思いつくヤツはだれもいないと思うが、この題名を見たとき、頭の中では「そしてミリンダをこぼす」というフレーズが浮かんだ。

    ミリンダといっても、今じゃ知らない人のほうが多いだろうな。

    まあ私の場合は実家で売っていたのでよく覚えているんだが。

     

    どうでもいいことはこの辺で止めて、まずは著者紹介から入る。

    マサチューセッツ州出身のアメリカ人作家。

    この作品が2作目。

    デビュー作がすでに日本に紹介されているが、メジャーどころの出版社ではなかったこともあり、あまり話題にならなかったようだ。

    だがこの作品は評判になった。

    私の持っているのは2018年7月の6刷、2月に刊行されたので毎月増刷がかかっている勘定になる。

    年末の各種ランキングで上位に入る前にこれだけ増刷がかかっているのは、私には驚くべきことと映る。

     

    全部で3部構成になっているが、章立てに大きな特徴がある。

    『第1部 空港のバーのルール』では、奇数章が実業家のテッドの一人称、偶数章が主人公リリーの一人称での語りとなっている。

    『第2部 未完成の家』では、奇数章がテッドの妻ミランダの一人称、偶数章がやはりリリーの一人称。

    『第3部 死体をうまく隠す』では、奇数章がボストン市警の刑事キンボールの一人称、偶数章がこれまたリリーの一人称。

    通していえば、偶数章はすべてリリーの語りとなる。

    こういった構成でこれだけの完成度のミステリになっていることに感嘆する。

     

    物語の発端は、テッドが空港のバーでリリーと話をしたことから始まる。

    最初のうちは丁寧に書き込まれていることもあり、じっくりと読み進めた。

    だが読み進むに従って、物語に引き込まれっぱなしとなり、気が付くとかなり速いペースで読んでいた。

    確かにこりゃミステリランクで上位に来るわ。

     

    ちょうどひと月ほど前に、同じ作者の新刊が出た。

    「ケイトが恐れるすべて」だ。

    ちなみに今度は「毛糸が縺れるすべて」というフレーズが思い浮かんでしまった。

    話を戻すと、この作品もなかなか評判がいいようだ。

    近々読むことになるだろう。

    この欄で取り上げるのはいつになるかわからないけれど。

    ジョーは裏切りと幻を見る

    • 2019.06.20 Thursday
    • 22:56

    JUGEMテーマ:活字中毒〜読書記録〜

    『過ぎ去りし世界』 デニス・ルヘイン著 加賀山卓郎 訳 ハヤカワ文庫 読了

     

    ボストンに住むアイルランド系の移民コグリン家の兄弟を描く三部作の完結篇。

    時代は20世紀の前半、二度の大戦や大恐慌、あるいは禁酒法といった言葉が連想される。

    三部作の題名を並べると、警官だった長男ダニーを主人公とした『運命の日』、ギャングとなった三男のジョーを描いた『夜に生きる』、そしてやはりジョーが主役を張るこの『過ぎ去りし世界』。

    この小説中では、ジョーはギャングを実質的に引退して、実業家に転身している。

    なおジョーが主に活動するのは、ボストンではなくフロリダのタンパ。

     

    先に書いてしまうと、好みの問題が大きいと思うが、三部作の中では一枚落ちるというのが私の評価。

    もちろん面白くないわけではなく、あくまで前の二作品と比較してという話だが。

    評価を低くしてしまった一つの要素としては、この作品が『夜に生きる』の後日譚的な意味合いが強いことがあげられる。

    無意識のうちに、後日譚であれば前作を面白さで越えられないといったバイアスがかかってしまったのかもしれない。

     

    またなんかこう、ある場面ではメロドラマを見てるような気にさせられた。

    その意味ではメロドラマがお好きな人は評価を高くするかもしれない。

     

    読んでいるうちにキーワードとして私の頭に浮かんだのが、「幻」と「ファミリー」、そして「裏切り」だった。

     

    三部作が終わったということであらためて著者について少し触れたい。

    巻末の著作リストがあるが、おそらく著者の作品を読んだのはこの小説でちょうど十作目ではないかと思う。

    角川文庫で私立探偵パトリック&アンジーものが紹介され、完結作と思われた作品までそのシリーズは読んだ気がする。

    そのあとはノンシリーズを二作読んで、このコグリン三部作へと続く。

    今まで読んできての印象は、解説にも書かれていたが、抒情が前面に出る作風だなというものだ。

    人によっては臭いとまで感じる人もいるかもしれない。

    まあ初期に比べると薄まってきていると思っていたのだが、この作品ではまた少し強まった気がする。

     

    この三部作の次の作品はノンシリーズものだった。

    これから先、全く新しいシリーズ作品が生まれるのだろうか。

    シリーズものが生まれるようなら、それはまた興味を掻き立てられる。

    少し期待している。

    完成度が高いデビュー作品

    • 2019.06.04 Tuesday
    • 22:09

    JUGEMテーマ:海外ミステリー

    「償いの雪が降る」 アレン・エスケンス著 務台夏子 訳 創元推理文庫 読了

     

    ある書評家が絶賛していたので読むことにした本。

    著者はこの作品がデビュー作。

    バリー賞ペーパーバック部門最優秀賞、レフトコースト・クライム・ローズバッド賞デビュー作部門最優秀賞、シルバー・フォルシアン賞デビュー作部門最優秀賞の三冠!と謳われているが、それぞれの賞がどのくらい権威のあるものかよくわからない。

    三冠から連想した競馬に例えるなら、2歳重賞を3つ取ったというところか。

     

    それではどんな内容かといえば、主人公は大学生のジョー。

    彼の置かれた境遇はかなり厳しいものがある。

    アルコールとギャンブル依存症である母と自閉症の弟がいる。

    ほとんど家を飛び出したい気持ちで大学に進学し、大学のそばのアパートで独り暮らしをしているが、母は弟をほったらかしてすぐ家を空けてしまう。

    そのため弟を一人にできず、何度もアパートと実家を往復する羽目になる。

    あまり言いたくないが、この主人公の環境に私はシンパシーを感じてしまう。

    もちろん私の母はアルコール依存症でもなければギャンブル依存症でもないので誤解なきよう。

     

    話を戻すとジョーは授業の課題で年長者の伝記を書くことになり、30年以上前に少女暴行殺人の罪で無期懲役になったカールを紹介される。

    インタビューをしているうちに、この老人が暴行殺人を犯したわけがないと確信し、事件の再調査を独自に行うようになる。

    すると今まで隠れていた事実が表に出て… というのがメインのストーリー。

    スタートは9月だった。

     

    サイドストーリーとして、主人公の住むアパートの隣人の美人女子大学生ライラとのラブストーリーがある。

    最初はつれない態度しかしなかったライラだが、ジョーの弟ジェレミーがいわばキューピットの役割を果たしたことにより、二人はぐっと近づく。

    ジェレミーがいい味出してます。

     

    訳者の力もあるのだろう、全体的にかなりすらすら読めた。

    ただ半分ほど読んだところで、今まで読んだミステリだと8割ぐらいまで事件は煮詰まってる感覚なのにまだこんなに残っているんだと怪訝に思った。

    まあそれだけ後半にいくつものヤマがあるということだと後でわかったわけだが。

     

    果たして事件の真相は、余命3か月のカールが旅立つまでに明かされるのか。

     

    未来のあるエンディングに救われた思いがした。

     

    また読んでいる最中に常に感じ、読み終わってあらためてその念を強く持ったのだが、かなり完成度の高い作品だと思う。

    デビュー作とは思えないほど。

    手練れの技といっていいのではないか。

    とはいうもののデビュー作でこれだけ完成度が高いと、これ以上の作品が生まれるのだろうかという心配もしてしまう。

    大げさに書くと、高卒5か月後の初登板でノーヒット・ノーランの快投を演じた近藤真一を一瞬思い浮かべた。

    その後の近藤のことは書きませんけど。

    ともかくノーヒット・ノーランは持ち上げすぎだが、完封勝ちくらいの価値がこの本にはあると思う。

     

    巻末の訳者あとがきによると、間に3作を挟んでジョーを主人公にした最新作が昨年末にアメリカで出たらしい。

    私の感じたことが当たってしまっているのか、あるいはいい意味で裏切ってくれているのか。

    最新作が日本でも刊行されたら、ぜひ読んで確認したい。

    フランス小説の伝統が凝縮

    • 2019.05.02 Thursday
    • 22:30

    JUGEMテーマ:活字中毒〜読書記録〜

    「炎の色(上・下)」 ピエール・ルメートル著 平岡 敦 訳 ハヤカワ文庫 読了

     

    「その女アレックス」で、日本でも一躍人気となったフランス人作家ピエール・ルメートルの最新作。

    また「天国でまた会おう」に続く、3部作の2巻目でもある。

    もっとも訳者あとがきによると、3巻目はまだ本国でも刊行されておらず、著者による構想が語られている段階のようだ。

     

    私はわりと本については付き合いのいい方で、3部作とあると1巻目を読んで面白いと思ったら2巻目も内容の確認をしないまま読み始めることが多い。

    この本もその流れで読み始めたと言っていいい。

    とはいうものの1巻目の内容が記憶にない。

    再度訳者あとがきからだが、そこで内容の紹介を簡潔にしていているのに、まったくといっていいほど思い出せない。

    そういえばそんな話読んだかなあ程度だ。

    困ったものだ。

     

    今回の小説の主人公は、前作の二人の主人公のうちの一人エドゥアールの姉のマドレーヌ・ペリクール。

    資産家の娘で、まだ小さな息子が一人いるという設定。

    物語はこのマドレーヌの父マルセル・ペリクールの葬式の場面から始まる。

    財界の大立者の葬儀というだけでいろいろと問題が生じてしまうことが予想されるが、想定できない大騒動が起こってしまう。

    マドレーヌの息子ポールが自宅の三階から地面に落ちてしまったのだ。

    この騒動から始まってペリクールが没落するまでを描いたのがいわば第一部で、1927年から1929年まで。

    1929年といえば世界史的見たら大恐慌の始まった年。

    マドレーヌの没落に当然絡んでくる。

     

    第二部は1933年から始まり、ペリクールの復讐譚となる。

    フランス・復讐譚といえば大デュマの「モンテ・クリスト伯」を思い起こさずにはいられない。

    この小説も、その物語の影響を色濃く受けている。

    小説のあとにある著者の謝辞に多くの作家の名前が挙がっているが、当然のようにアレクサンドル・デュマの名前があった。

    さらにこれは意外だったのだが、トレヴェニアンの名前まであった。

    多岐にわたってますね。

     

    全体を振り返ってみると、やはりこれはフランスを舞台とした小説で、フランス人作家が書いたものなんだろうなと強く思った。

    それはどんなところに現れているかといえば、公然の秘密のような愛人の存在だったり、さらに下半身事情が緩いところだったり。

    こんなことを書いてしまうとフランス人への偏見と思われてしまうかもしれないが、フランス人作家の小説を読むとやはりこう思ってしまうんだよなあ。

    あと人によって意見が分かれるかもしれないが、かなり喜劇調の小説ととらえることもできるだろう。

    やはりこれもフランスの小説の伝統を受け継いでいるといっていいように思う。

     

    突然話は変わるのだが、読書の習慣を長く続けていると、全然意識していないのに、今読んでいる本がつい最近読んだ本と似ているところがあると気付くことがある。

    この本でいえば、やはり今年読み終えた「夜に生きる」と、場所はアメリカとフランスの違いはあるが、時代は大恐慌前後という共通点を見つけることができる。

    そういえばあの小説も3部作の2巻目だった。

    それ以外でも、最近でいえば、舞台が関西で関西弁のテンポが小説上重要というもの、あるいは主人公がジャーナリストというもの(ちょうど今読んでいる作品です)などがある。

    意識して似たような本を選んで読んでいるわけではないのだが、こういったシンクロニシティは何か意味があるのだろうかと考えるようにもなる。

     

    「夜に生きる」を含む3部作は読み終えた。

    今度はルメートルの3部作を早くお読み終えたいと思う。

    刊行が待ち遠しい。

    無法者はギャングになった

    • 2019.03.07 Thursday
    • 22:43

    「夜に生きる」 デニス・ルヘイン著 加賀山卓郎 訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 読了。

     

    アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作、アイルランド系移民一家を巡る年代記三部作の二作目にあたる。

    一作目はかなり以前に読んだのだが、この作品が文庫化されたのを見落としていて、三作目が文庫化されたのを知り、あわてて二作目を手に取ったという流れだ。

     

    著者は、最初に日本ではデニス・レへイン名義で紹介が進んだ。

    角川文庫で出たボストンの私立探偵パトリック&アンジーシリーズだ。

    出版元が変わって、今ではデニス・ルヘインの名で刊行される作品のほうが多くなった。

    過去にさかのぼって全作品を読みたいと思った方が、著者で検索したところヒットしないということもあるかもしれない。

     

    さてこの小説自体は三部からなり、第一部はボストンが、第二部と第三部は主にフロリダ州タンパのイーボーシティが舞台だ。

    時代でいうと1926年から1935年までの約10年、ちょうど1920年に禁酒法が試行され、アルカポネに代表されるようにギャングが幅を利かせた時代背景がある。

    ストーリーとは直接関係ないが、タンパといえばプロレスを連想する。

    その意味で特に第二部以降は細かいことだが親しみやすさがあった。

    さらにその土地からくるものも含めて、ボストンは陰、イーボーシティは陽のイメージ、読み進むにしたがってドキドキ感が増した。

    やはり陽のほうが前に進むエネルギーが起こりやすい。

     

    この小説の主人公は、アイルランド系移民のコグリン家の三男ジョー(ジョゼフ)。

    この本の解説に、アイルランド系移民は警官や消防士の職に就くものが多かったとある。

    父と長兄はその言葉の通り警官になった。

    だがジョーはその真逆の道に進んでしまう。

    ここで登場人物一覧に注目したい。

    普通の登場人物一覧は、1冊中では同じ肩書であることが普通だ。

    だがこの小説の登場人物一覧は各部ごとにあり、第一部と第二部で無法者という肩書だったジョーが第三部ではギャングと変わっている。

    意味合いとしては、下っ端が一国一城の主に登り詰めたようなことなのだろう。

     

    またジョーが惚れる二人の女性がともに魅力的だ。

    私は特に活動家グラシエラ・コラレスに魅かれる。

    強いのに特定の男の前では女を感じさせるところがいい。

    魅力的というより魅惑的というべきか。

    もしかしたら、もう一人の女エマ・グールドのほうが魅惑的と見る方もいるかもしれないが、私はこちらだ。

     

    さらに、あるアメリカ映画を連想する印象的な場面があったり、あるいは父の形見の懐中時計といううまい小道具の使い方があったり、手練れによる小説だと思う。

    上下巻合わせ約700ページも、長さを感じさせずに読み進むことができた。

     

    実はこの翻訳小説を読み終えてその次に読んだ翻訳小説がちょうど同じ時代を描いたものだった。

    こちらはアメリカで次がフランスとちがう国が舞台ということもあり、このブログに書くにあたり、目次を見直して今頃気が付いた。

    さらにいうとその小説も三部作の二作目だった。

    こういうシンクロニシティがあると、面白いもんだなあと思う。

    この小説がアメリカのハードボイルドの流れから生まれたものなら、次の読んだものはフランスの文豪大デュマの流れのもの。

    どちらが上という話ではない。

    どちらも面白い。

    また近いうちにこのブログにそのフランスの小説を読んだ感想をアップしたい。

    ボッシュ、刑事のタブーを冒すも

    • 2019.02.06 Wednesday
    • 22:55

    JUGEMテーマ:海外ミステリー

    「贖罪の街(上・下)」マイクル・コナリー著 古沢嘉通 訳 講談社文庫 読了。

     

    久しぶりに読んだ本の感想を書く。

    この本は昨年末から読み始めたものの、読み終わったという意味では今年の第一号。

    安定のハリー・ボッシュシリーズもこの作品で十八作目になるという。

    ただ常に読者を飽きさせない企みを盛り込む著者は、この作品で別のシリーズキャラクターであるリンカーン弁護士ミッキー・ハラーを第二の主人公というべき位置に登場させた。

    腰巻にも「ボッシュ刑事×ハラー弁護士 タッグを組んだ!」とある。

    ただ、ボッシュは前作の終わりで退職に追い込まれることになり、そのことへの異議申し立ての訴訟中ということで、刑事でいいのか元刑事のほうがいいのかはよくわからない。

     

    原題は「THE CROSSING」、横断という意味とのこと。

    もともと容疑者を捕まえる者が、立場を横断し、逆に容疑者の弁護の立場に回ったことを指す。

    このことは刑事にとってタブーなのだが、主人公のボッシュは、ハラーのたっての依頼で「裏切り行為」をしてしまう。

    とはいえ、事件の真相を表に出すという意味では、ボッシュの行動理念に揺らぎはない。

    なおこの本を読むまでは「贖罪」の贖という字を書けなかったが、読んでいるうちに書けるようになった。

    シシカイカイと覚えれば書けるようになります、キキカイカイではなく。

     

    作品を一言でいうなら悪徳警官もの。

    そういった敵役であれば、罪をなすりつけられた人物の弁護のためにボッシュのとる行動には筋が通っている。

    またこの作品で一番驚いたのは、小説中の視点だった。

    もともとボッシュシリーズは三人称一元視点で語られている。

    ただこの作品中では三人称神視点の部分も多い。

    ボッシュシリーズとうたったものでは初ではないか?

    まあ過去の作品を読み返していませんので、間違っているかもしれませんが。

    視点がいつもと違うのは、第二の主人公役ハラーが登場しているためだろうとは想像できる。

    この作品、ボッシュの一元視点からだけでは回らないと思うもの。

     

    物語の後半、大きな山場の後は、今度はハラーが主役、ボッシュが脇役に回る。

    このあたりは、おまけというにはもったいない、むしろ一粒で二度おいしい的なエンディングと感じた。

     

    最後に、ボッシュはこの作品中では65歳だが、また新たな魅力的な女性が存在感を持って現れる。

    そして強烈な体験を共有する。

    次の作品、二人の関係に進展はあるのかといった下司っぽい興味を頭に残して、刊行を待ちたいと思う。

    「恋しくて TEN SELECTED LOVE STORIES」村上春樹 編訳 中公文庫 

    • 2017.03.01 Wednesday
    • 23:26

    JUGEMテーマ:活字中毒〜読書記録〜

    村上春樹が自ら選んで翻訳したラブストーリー9編と、村上春樹自らによる作品1編の、計10作品からなる短編集。

    実際のところは定かではないが、村上春樹訳の作品だけでは売れ行きの面で少し弱いので、村上春樹の新作短編を入れればもっと売れるだろうといった思惑が働いたのではないかと勘ぐってしまう。

     

    その村上春樹による短編だが、題名は「恋するザムザ」。

    詳しい方は読む前に想像がつくのだろうが、私は読み始めてからやっと気づいた。

    あれ、これってカフカの「変身」の逆?

    「変身」では人間が虫状の生物に変身するわけだが、こちらは変身して人間になってさあ、というところから始まる物語。

    「変身」の主人公の名前がザムザということを、この作品を読み終わってから確認した。

    「変身」は読んだことがあったが、主人公の名前までは憶えてなかった。

    ともかくヘンな作品というのが正直な感想、面白くなかったとは言いませんが。

     

    翻訳の9編は、ストレートなものから、屈折したもの、さらには同性愛ものまで、時代を含めてかなりヴァラエティにとんだものとなっている。

    9編の中で、面白さは別にして、私が一番印象に残っているのは「恋と水素」という作品だ。

    『恋』と『水素』という結びつきだけでも心に引っかかるものがある。

    舞台は1937年、ドイツの飛行船の中、愛し合う二人はともに男だ。

    この時代のドイツである、当然ナチスの統治下。

    ナチスといえば、その思想から同性愛は許されないものだった。

    飛行船内で逢引きする二人は、その結果として何をもたらしたのか。

    で、水素です。

     

    10作品にはすべて村上春樹による恋愛甘苦度判定がついている。

    甘味も苦味も★五つが最高度、足して五になるように★は振り分けられている。

    例えば最初の短編「愛し合う二人に代わって」は、甘味が★★★★、苦味が★といった具合。

    自分の判定とずれていることがよくあった。

    こんなもの人それぞれだと開き直っている。

     

    ちょうど村上春樹の長編小説が刊行されたばかり。

    たぶんそのうち読むとは思うが、そのうちが数か月後なのか3年後なのか、はたまたもっと先なのか。

    ちょっと評判を探るところから始めようかなと思っている。

    「転落の街」マイクル・コナリー著 古沢嘉通 訳 講談社文庫

    • 2017.02.10 Friday
    • 23:59

    JUGEMテーマ:活字中毒〜読書記録〜

    ロサンジェルスが舞台の、強盗殺人課未解決事件班の刑事ハリー(ヒエロニムス)・ボッシュを主人公としたシリーズの最新翻訳作。

    シリーズ開始から二十年、ボッシュも定年を迎える年齢となった。

     

    原題は「THE DROP」、この「DROP」には三つの意味が込められている。

    と、ここで少し話は横道にそれる。

    今まで私は本を読むとき、メモなど取らずにとにかく読み進めていた。

    だが昨年の晩秋のころから、本に付箋を貼るようになった。

    そのころから新年になったらブログを再開しようと考えていたので、より内容を深く把握するための手助けになればと初めて見たわけだ。

    ここでまた話を本筋に戻す。

    この「転落の街」でも気になったところに付箋を貼っていった。

    特に、いくつかの言葉にDROPあるいはドロップとルビをふっている個所に付箋を貼っていった。

    定年延長選択制度(ディファード・リタイアメント・オプション・プラン)、滴下血痕。

    そしてDROPにはもう一つ、転落の意味も込められている。

     

    ボッシュは二つの事件を並行して担当することになった。

    一つは未解決事件班としての本来の業務。

    こちらは被害者に付着した滴下血痕から判明したDNAは、当時八歳の少年のものだった。

    その少年が犯人なのか、違うとしたら真相は?

    もう一つは一流ホテルで起こった転落死事件。

    落ちた人間は、元ロス市警副本部長で現在は市議の息子だった。

    またその市議は警察の副本部長時代、ボッシュとの間に確執があった。

    市議の圧力で、本来の担当ではない転落死事件も担当になる。

    なぜ担当に指名されたかいぶかりながら事件の究明にあたるボッシュ。

     

    ボッシュは事件解決に直線的に向かう。

    パートナーへの説明もろくにされないまま。

    確かに腕利きなのはよくわかるのだが、これではパートナーはついてこないだろうなとも思う。

    ともかく事件の真相に迫るところは、巻置く能わざるの言葉がふさわしい。

     

    ここでまた話は横道のそれる。

    今度は大きなお世話といわれるかもしれない。

    この作品は上下巻からなり、どちらも330ページほどで本体価格は860円だ。

    人によっては高いと思う人もいるかもしれない。

    上下巻ではなく、1冊にまとめればもっと安くできるではないかと思う人もいそうだ。

    だが制作する側からしてみれば、アドバンスを少しでも回収したいという意図があるのではないかと気がする。

    言い換えれば、赤字覚悟だが、日本への紹介を辞めたくない一心で、それは出版社としての使命感といっていいのかもしれないが、紹介を続けているような気がする。

    何を言いたいのかといえば、こんなに面白いシリーズを今後も出し続けてもらえるよう、もっと売れてほしいということ。

    どうかこのシリーズの紹介が今後も続きますように・

    「悪童 エリカ&パトリック事件簿」 カミラ・レックバリ 著 集英社文庫

    • 2017.01.20 Friday
    • 23:27

    JUGEMテーマ:活字中毒〜読書記録〜

    「悪童」を読み終えた。

    「エリカ&パトリック事件簿」シリーズの第3弾。

    訳者は富山クラーソン陽子。

     

    スウェーデンの小都市フィエルバッカを舞台にしたいわゆる北欧ミステリ。

    「氷姫」「説教師」ときて、この「悪童」となる。

    シリーズ3作品目となると、主要登場人物の特徴がつかめてくる。

    特にパトリックの同僚の刑事たちと署長のキャラクターが頭の中に定着してきたので、先の展開が予測できるようになった。

    といってもその上を行く常軌の外しっぷりを見せる登場人物もいますが。

     

    ロブスター漁の網に少女の出来死体がかかって引き上げられた。

    少女はエリカのママ友の娘だった。

    事故と思われたが検死の結果、殺人と判断された。

    この事件の謎を追うのが表のストーリー。

    もう一つ1923年から始まる無茶苦茶性格の悪い女性を追うストーリーも並行して展開される。

    この二つのストーリーはどう結びつくのか、そこがこの小説の一番の読みどころだろう。

     

    登場人物は、この手の小説としてはちょっと多いと思う。

    だが冒頭に『人物相関図』があって、これがかなり重宝した。

    ある男性の、妻の名前がシャロットで、不倫相手の名前がシャネットで、慣れるまで混乱があったが、『人物相関図」で確認しつつ読み進めた。

     

    犯人は誰なんか、裏のストーリーを考慮するとよめるかと思ったが、それでも意外だった。

    ただ最後はちょっと説明調になってしまったかなと思った。

     

    事件が解決を迎え、最終章でエリカとパトリックの関係が新たな段階に進むことになる。

    とそこへさらに大きな展開が。

    第4弾のプロローグになっている。

    こう書かれると読まざるを得ないな。

    今のところ8作品が刊行されている。

    まだまだ楽しめそうだ。

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