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    将棋も人生も大逆転したる

    • 2019.07.01 Monday
    • 22:31

    JUGEMテーマ:活字中毒〜読書記録〜

    『盤上のアルファ』 塩田武士 著 講談社文庫 読了

     

    昨今将棋ブームを強く感じる。

    私自身は小学校6年のとき将棋クラブの部長をやっていたくらいで、当然昔からの将棋好きだ。

    将棋好きかつ本好きということで、ここ数年の間に刊行された文庫や新書の将棋関連本はできるだけ読もうとしている。

    ただノンフィクションばかりで将棋小説は多分読んだことがなかったのではないか。

    そういったときにちょうどこの本の存在を知った。

    今年の2月にNHK-BSで放映されたドラマ「盤上のアルファ 〜約束の将棋〜」の原作本である。

     

    ストーリーは、将棋しか能のない男が、一度はあきらめた将棋指しになる夢を実現すべく、周りの協力を得て再度切り拓いていくというものだ。

    舞台は神戸を中心とした関西。

    当たり前だが会話は関西弁が中心。

    「後妻業」でもそうだったが、この作品でも関西弁であることが会話のスピード感など内容とは別のところも含めてリーダビリティにつながっているように思う。

     

    全部で五章からなる。

    「第一章 秋葉隼介」では、小説中の狂言回しの役を務めることになる新聞記者の秋葉隼介の章。

    この記者は、新聞社の花形部署である社会部の県警担当だったが、「性格が悪かった」ので文化部に転属となる。

    そして今まで考えもしなかった将棋の記事を書いたり、舞台の設定に携わったりすることになる。

    将棋を知らない読者でも違和感なく読めるような役割も担っている章なのかもしれない。

     

    「第二章 真田信繁」では、この小説の主人公の真田信繁の章。

    彼は将棋指しの養成機関である奨励会を去らざるをえなかった男だ。

    つい最近までは喫茶店のバイトで食いつないでいたが体よく首になる。

    それももとをただせば「性格が悪かった」がゆえ。

    また将棋に関しては、いかに腕が立つかを、さらにそこに至った経緯を子供のころから始めて綴られている。

    この章の中で「アルファ」の意味が分かる。

     

    「第三章 出会い」では、この性格の悪いもの同士が遭遇する。

    場所は神戸三宮界隈の「カウンターに七席」という小料理屋。

    ここからストーリーは本格的に動き出すのだが、この小料理屋を一人で切り盛りしている静(しずか)さんがもうサイコー。

    リーチ一発を見逃したあと倍満ツモってトップになった茅森くらいにこの女サイコー。

    二人が取り合うのもよくわかる。

    真田信繁は、将棋のプロになるため、一度は退会した奨励会の一番上のクラスに編入される試験をうける決意を固める。

     

    「第四章 真剣師」では、小学生時代の真田信繁に将棋を仕込んだ真剣師林鋭生が再登場する。

    真田の、いわば将棋の師匠だ。

    編入試験を突破できるよう厳しい修行が再度始まる。

     

    「第五章 編入試験」では、編入試験の対局を追っている。

    ここで成績をあげなければ、今までの苦労が水泡に帰す。

    最後の対局のそれも土壇場の場面、先手が指したその一手は?

    将棋に詳しい方ならこの手の持つ意味がお分かりいただけるはず。

     

    対局の後の場面、え、そうなの?といった衝撃を食らった。

    小説の面白さも含めて、著者にやられたという思いがした。

    言うまでもないがこのやられたは最大級の誉め言葉だ。

    とかくこの世はワルばかり

    • 2019.06.18 Tuesday
    • 23:05

    JUGEMテーマ:活字中毒〜読書記録〜

    「後妻業」 黒川博行 著 文春文庫 読了

     

    今年の1〜3月放映のテレビドラマで「後妻業」というものがあった。

    そのドラマの原作本がこの本。

    原作本ということで、私の持っている文庫本もドラマの番宣で使われる写真が腰巻に使われている。

    だが本を読み終えてこの写真を見ると、かなり違和感を覚える。

    それは本の中での主人公が69歳という設定なのに、その役を演じていると思われるのが木村佳乃だからだ。

    まあ高齢者よりも若い女が後妻に入る設定にしたほうがテレビドラマとしては受けるという読みなのかもしれないが。

     

    まず「後妻」業について説明すると、長年連れ添った妻に先立たれた高齢の男性の後妻に収まることで、少なくない資産価値の遺産を相続するという女のお仕事である。

    ここで高齢かつ財産家の男性を見つけるというステップが必要になるが、そこは結婚相談所を絡めることで容易にクリアできる。

    小説中では後妻業の女と結婚相談所の所長がタッグを組んでいる。

    これがまたお互いの腹の中では狐と狸の化かしあいというかなんというか。

    お互いに少しでも多く資産を自分のものにしたるという欲望が、読んでいるこちらに迫るように伝わってくる。

     

    ここで『したる』といった大阪弁がつい出てきてしまった。

    小説の舞台が大阪を中心とする関西なので、会話も当然大阪弁ばかりになる。

    この大阪弁がまた後妻業というお仕事に絶妙にマッチしているというように感じられる。

     

    あらすじはというと、多くの資産を残したはずの父が亡くなり相続する手続きを進めようとしたら、全然知らなかった父の後妻が登場し、証文通りでは予想よりもすっと少ない財産しか相続できなくなってしまうことが二人の娘にわかる。

    そこで娘の一人が、知り合いに相談すると、それは調査の必要があるという話になる。

    物語は、調査員が後妻業の女の過去を調べていくことがメインのストーリーとなるが、一つまた一つと後妻業の女の所業が露顕されるに従い、私の悪に対する感覚が次第に麻痺していった。

     

    出てくる登場人物がことごとくワルであったり、腹に一物持っていたり。

    少しぐらいの腹黒さも、そのうち可愛いもんだと思うようになってしまった。

     

    物語の結末は、正直私の予想に近かった。

    まあ誰もがそう予想するだろうなという気もする。

    そうでなきゃ…

     

    著者の黒川博行の小説は多分初めて読んだと思う。

    小説ではなく、将棋の自戦記なら読んでいる。

    集英社文庫の一冊に「棋翁戦てんまつ記」という本がある。

    冒険小説作家同士が指した将棋の自戦記や挑戦状などをまとめた本だが、話が進むにしたがって収拾がつかなくなり、一番強いと噂のこの本の著者黒川博行に登場願い、やっと蹴りを付けた。

    棋書であり奇書でもある。

    小説を読んでみての著者に対する感想はというと、ワルいヤツを書かせたらハンパなくうまいなという印象を持った。

    だからワルいヤツばかり出てくるこの小説が面白くないわけがない。

     

    あらすじを読んだ方の中には、これってあの事件がモデルじゃないのと思った方もいるかもしれない。

    あの事件とは2013年に発覚した関西青酸連続死事件だ。

    犯人は結婚相談所を介して知り合った男性と結婚すると、その男性を青酸化合物で死に至らしめ、遺産を相続する。

    確かにこの小説との類似点は多い。

    文庫の元版の単行本の刊行が2014年8月、これだけだと実際に起こった事件の後追いかと思ってしまうが、雑誌連載開始が2012月の早い時期、事件はまだ発覚していなかった。

    あるいは事件の発覚を予見していたと言えるのかもしれない。

     

    業という字が『ぎょう』ではなく『ごう』とも読めると気付く。

    『自業自得』の業でもあると思うと、漢字って奥が深いなあとも思う。

    「驚愕の結末」に偽りなし

    • 2019.06.17 Monday
    • 22:36

    JUGEMテーマ:活字中毒〜読書記録〜

    「ペテロの葬列(上・下)」 宮部みゆき 著 文春文庫 読了

     

    先週は金曜・土曜と頭痛がひどく、私としたことがIスタ行きをお休みしてしまった。

    頭痛は土曜の夜になっておさまり、よっこらしょっと起きだしてNHKのスポーツニュースを見たら、あの逆転劇ですよ。

    なんであの場に居合わせられなかったのだろう。

    今度は後悔の念で日曜も昼間は起きられず、久しぶりに一試合もサッカー観戦をしない週末となってしまった。

    というわけで今週のこのブログは、読書記録が続くことになると思います。

     

    で「ペテロの葬列」だ。

    この本はシリーズキャラクター杉村三郎シリーズの第三弾ということになる。

    ここまではすべて長篇で、次から短篇集・中篇集となる。

    また主人公の職業も、社内報の編集者から私立探偵へと変わることになり、その意味で大きな転換となる一冊といえよう。

     

    シリーズキャラクターというと、作家はこのキャラクターならこの出版社と変えることが多いように思う。

    東野圭吾なら、探偵ガリレオは文藝春秋、加賀恭一郎であれば講談社というように。

    赤川次郎も、読んだことないので詳しくないが、幽霊シリーズとか三姉妹探偵団とか吸血鬼シリーズとか(三毛猫ホームズはちょっとややこしくなるので置いておく)。

    だが杉村三郎シリーズの長篇三部作の単行本はすべて違う出版社から刊行されているというのが面白い。

    第一弾「誰か Somebody」は実業之日本社、第二弾「名もなき毒」は幻冬舎、そして第三弾「ペテロの葬列」が集英社だ。

    さらにこのあとに出た「希望荘」は小学館だった。

    だがこれだけ単行本はバラバラな出版社から出ているのに、文庫本はすべて文春文庫から刊行されている。

    なんか大沢オフィスの戦略を見る思いがする。

     

    上にも書いたが、この本の後に「希望荘」というシリーズ作品が文春文庫から出た。

    それに合わせ店頭では統一した腰巻を付け、4点(5冊)が平台に並んでいるところをよく見かけた。

    その帯にあるこの「ペテロの葬列」の紹介文では『主人公に襲いかかる悲劇』とある。

    そして「希望荘」の紹介文中に、その悲劇と思われることが書かれていて、ネタ晴らしするなよと思っていた。

    だがこの本をおしまいまで読んで、驚愕した。

    私が予想した悲劇以上の悲劇がそこにあった。

    宮部みゆき、恐ろしや。

     

    おしまいまで進んでしまったが、あらすじを簡単に。

    社内報の取材の帰り、バスジャックに巻き込まれる主人公たち。

    犯人の話し方に、どこか引っかかりを覚える杉村だが。

    事件はあっさりと終息したかに思えたが、思わぬ方向に続いていく。

    実際にあった経済事件を取り込んで、物語は広がりを見せ…。

    人間は感情かつ勘定の動物だと思わずにはいられない。

     

    署名に出てくる『ペテロ』とはイエスの十二使徒のひとり。

    イエスから許すことの大切さを学んだことで知られるようだ。

    この本の上巻の表紙をめくるとすぐにレンブラントの「聖ペテロの否認」の絵が目に飛び込んでくる。

    最初のうちはこの書名の意味が分からなかったが、私はあるところで意味が分かった気になった。

    深いなあ。

     

    大変面白く、次の場面に進むのが楽しみだった。

    とここでまた私の悪い癖、重箱の隅をつついてしまう。

    主人公を乗せたクルマは、栃木と群馬の県境あたりに向かうのだが、関越自動車道に乗って向かっていくというような描写がされている。

    いや、そこに向かうなら東北自動車道でしょ。

    まあ、こんないちゃもんにはペテロの気持ちになって許してもらいたいと書いておく。

    まっすぐに生き続けること

    • 2019.04.19 Friday
    • 23:01

    「星夜航行」飯嶋和一 著 新潮社 読了。

     

    いやあ、読み応えのある本だった。

    上下巻合わせて約1100ページ、それも改行が少なく漢字・漢語が多い。

    この本だけを読んでいたわけではないが、読み始めてから読み終わるまで19日かかっている。

    私の平均的なペースの二倍以上を要したことになる。

    それでも読んでる最中は物語世界に没頭できたし、主人公のまっすぐな生き方にしびれた。

     

    まずなぜこの本を読もうと思ったかから始めたい。

    もともと飯嶋和一は、文庫落ちを待たず単行本から読むことの多い作家だった。

    この本が刊行されたときも買おうかと思ったのだが、一度立ち読みするとボリュームに圧倒され、保留にしてしまった。

    だが「本の雑誌2019年1月号」で発表された2018年の各ジャンルベストテンで、この「星夜航行」が時代小説と現代文学の2つのジャンルにおいて1位になっていて驚いた。

    1つだけでも難しいのに二冠だ!

    それであらためて読もうと思った次第だ。

     

    物語の第一部は天正三年(1575年)から始まる。

    そして第四部は慶長三年(1598年)で終わっている。

    エピローグ的な部分もあるものの、実質的な物語はこの20年強の間に収まっている。

     

    主人公は三河国の逆臣の遺児、沢瀬甚五郎。

    馬の扱い、剣術さらに鉄砲の腕など、抜きんでた武士としての力量を持っていた。

    だがこの時代に武士としてあり続けるには、甚五郎の性格はあまりに純粋で正直すぎた。

    武士の身分を捨てることを決意したところまでが第一部。

     

    第二部は、甚五郎が堺で商人となり、拠点を薩摩さらには博多へと移す。

    その間に商船に乗ってルソンにまで出かけるなどして、アジアの視点を身に着ける。

    一方日本の国はとみれば、秀吉が朝鮮出兵へと舵を切る。

     

    第三部は甚五郎の描写は少なく、泥沼化した朝鮮出兵を中心に描かれている。

     

    そして第四部では当事者としての甚五郎が、朝鮮出兵が終息を迎える中でいかに自分を律し続けていたかが描かれている。

     

    時代小説というと江戸時代の先入観があるからか、主人公が武士から商人になった時は、え?っと思った。

    だがよく考えてみたらこの時代はまだ職業の変更ができたのだった。

    主要登場人物の一人、小西行長は逆の方向で、商人の家系の出であったが武士となっている。

     

    この小説の中で最も驚いたのは、豊臣秀吉が暴君として書かれていることだ。

    秀吉といえば立志伝中の人として立派な人と描かれていることが多い。

    だが、著者は秀吉を「蒙昧」という言葉で形容している。

    それも約5ページの間に二度も。

    小説家という人種は、語彙が少ないと思われるのが嫌で、同じ言葉をそうは使わないものと思っている。

    にもかかわらずこのように蒙昧を使うということは、それだけ秀吉は蒙昧な人といいたいのではないかと思った。

    さらに蒙昧と書けば、その前に付く二文字が容易に連想される。

     

    また文禄・慶長の役の描写を、これでもかこれでもかと続けている。

    ここで感じたのは、実際に朝鮮兵や寒さと戦っている日本兵がいかに苦しんでいたか。

    もっと書けば男手を兵にとられて、田畑はあっても耕す人がいない。

    兵士や物資の輸送のために漁師が船のこぎ手として対馬に集められる。

    これでは魚が取れない。

    働き手を取り上げておいて、今までと同じかそれ以上の収穫をあげろと命令するなど、遠い伏見から指示を出すだけの秀吉の蒙昧さも浮き彫りとなる。

    さらに戦に勝てばすべてが解決するとばかりに、兵站の補給ルートを確保しないで戦い続けるのを読むと、太平洋戦争末期の無茶な作戦の原型はここにあるのかと思ってしまった。

     

    ただこういった時代に翻弄されても仕方のない中、自分に正直であり続けようとした主人公の在り方には胸を打つものがある。

    そしてエピローグ…

     

    私の心の奥まで響き、『飯嶋和一にハズレなし』を実感した大作だった。

    陽気なギャングを読んでみな

    • 2019.02.20 Wednesday
    • 20:06

    JUGEMテーマ:伊坂幸太郎

    「陽気なギャングは三つ数えろ」 伊坂幸太郎 著 祥伝社文庫 読了。

     

    陽気なギャングたちが帰ってきた。

    この作品がシリーズ3作目になる。

    4人のギャングたちの特長は今回の作品でも変わらず発揮されている。

    嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、正確な体内時計を持つ女。

    彼らの家族や関係者、協力者も登場する。

    解説者も書いているとおり、単独作品としても面白く読めるが、シリーズの順番通りに読んだほうが、さらに面白く読めるのではないかと思う。

     

    今回の一番の読みどころは、正体を突き止められそうなピンチに陥った4人が、そこからどうやって脱するかというところだろう。

    正直読み進めている間は、かなりの難問を著者は自分自身に課してしまったものだと思っていた。

    そしてその首尾はといえば、なるほどそう来ましたか、全く想像できませんでした。

    100%の満足というわけではないけれど、そのアイディアには脱帽します。

    天才スリ君のもう一つの得意とするところがここで生きるわけだ。

     

    読んでる最中に感じたのだが、このシリーズをさらに書き続けるのにはかなり苦労するだろうなと。

    だれでもスマートホンを持っているこのご時世、演説の達人がひとたび語りだしたら、一人ぐらいはこっそりその映像を撮って、すぐSNSにあげることは十分ありそうだ。

    そんな中で4人の正体がばれずに銀行強盗はできるのか。

    シリーズはさらに読みたいが、著者はこのハードルを乗り越えられるのだろうか。

    まあ伊坂幸太郎だけに、私のこんな心配を鼻で笑うような物語を書いてくれるだろうと期待している。

     

    となるとその作品はどんな題名になるだろうかという疑問がわいた。

    というのも、3作の題名を並べるとこんな感じになる。

     陽気なギャングが地球を回す

     陽気なギャングの日常と襲撃

     陽気なギャングは三つ数えろ

    きれいに揃ってますね。

    陽気なギャングが固定、助詞があってそのあとに5文字。

    また2作目には日常のが、3作目にはつとあって、次は『よん』とか『し』が含まれそうだ。

    この傾向を踏まえ、勝手に題名を予想してみた。

     陽気なギャングで恐怖の四季

     陽気なギャングとヨンアピン

     陽気なギャングを知っとるけ

    当たりそうもないか。

    「忍者と剣客」 集英社

    • 2017.02.16 Thursday
    • 00:10

    JUGEMテーマ:活字中毒〜読書記録〜

    集英社 創業90周年 記念企画 「冒険の森へ」傑作小説大全 全20巻 第19回配本の1冊。

    第1回配本が2点だったので、これが最終配本となる。

    ほぼ20か月、毎月1点ずつこの分厚い本を読んできた。

    今となっては名残惜しさも若干ある。

     

    構成はショートストーリーが4編、短編も4編、長編が2点。

    作品名と著者名を列記する。

     ショートストーリー

      「かけひき」小泉八雲

      「決闘」逢坂剛

      「猿取佐助」清水義範

      「草之丞の話」江國香織

     短編

      「異聞浪人記」滝口康彦

      「隼人の太刀風」津本陽

      「讐」綱淵謙錠

      「柳生連也斎」五味康祐

     長編

      「甲賀忍法帖」山田風太郎

      「赤い影法師」柴田錬三郎

    短編や長編の著者名にはなるほど納得といった名前が並ぶが、ショートストーリーには「忍者」や「剣客」とは遠いところで活躍されている作家の名前が並ぶ。

    この辺りの選択にはニヤリとしてしまう。

     

    ここまで作品の名前を挙げたわけだが、誤解を承知で書いてしまえば、私がこの本の中で一番面白く読んだのは夢枕獏による解説だった。

    「全ては『甲賀忍法帖』から始まった」と題されている。

    以前『甲賀忍法帖』を紹介した文章を読んだときに、これって『伊賀の影丸』に似ているなと私は思った。

    しかし発表年を考えれば、『伊賀の影丸』が『甲賀忍法帖』に似ている、さらに言えばいただいているのが正しいとわかる。

    夢枕獏も同じようなことを思ったわけだが、そこからさらに『甲賀忍法帖』のスタイルがその後の人気漫画に取り入れられていると説明している。

    顕著な例として車田正美の『リングにかけろ』の軍団対決をあげている。

    ここで成功を収めた「少年ジャンプ」はこの方法論を下敷きにした漫画を多く並べ黄金時代を築くことになる。

    集英社の社屋の何割かはこれらの漫画の売り上げでできているといわれているそうだが、その集英社の創業90周年記念企画に『甲賀忍法帖』が収録されるのも、ある意味必然だったのかもしれない。

    さらに影響は漫画にとどまらない。

    1984年に新日本プロレスが開催した”正規軍対維新軍“の5対5マッチも、元をたどれば『甲賀忍法帖』に行きつくと夢枕獏は見ている。

    そこまでは思い至らなかった。

    『甲賀忍法帖』恐るべし。

    なお、最初の場面が駿府城内、最後の場面が安倍川の河原というのも私にはうれしかった。

     

    長編では「甲賀忍法帖」ばかりを取り上げてしまった。

    一方の「赤い影法師」も負けず劣らず手に汗握りっぱなしの作品だった。

    こちらは講談の”寛永御前試合“を題材にしたもの。

    10組の達人武芸者同士の対決が読めるだけでなく、服部半蔵・柳生宗矩・真田幸村・赤猿(猿飛)佐助などなど、キャストも豪華。

    さらに水面下に流れるテーマが表面に浮上するとき、物語は別の一面を見せることになる。

    主人公の”母影“”若影“の名前に、あるいは『仮面の忍者赤影」はここから取ったのかと思ったり。

     

    最後に夢枕獏の解説の終わりの一行を引用する。

    「『甲賀忍法帖』、『赤い影法師』、いまだ傑作なり。」

    「さよならの手口」若竹七海 著 文春文庫

    • 2017.02.02 Thursday
    • 23:01

    JUGEMテーマ:活字中毒〜読書記録〜

    『仕事はできるが不運すぎる女探偵葉村晶』シリーズの文春文庫では三作目。

    前作から実に13年ぶりの作品となる。

    アラサーだった主人公も、今回では四十肩に悩む年齢となっている。

     

    天職と思えた探偵を仕方なく休業し、吉祥寺のミステリ専門店でバイト中の主人公。

    この仕事なら平穏な日々を送れるかと思うと、そうはいかないのが不運すぎると形容される所以。

    古本を引き取りに行った先で白骨死体を発見、同時に全身打撲、肋骨二本にひび、頭も強打、入院することになる。

    その入院先の病室で同室だったのが、高齢の元女優。

    そこで二十年前に失踪した娘の調査を依頼される。

    そこから物語は進みだす。

     

    読み進めて、山場の手前ぐらいの位置といっていいだろうか、興味深い記述を見つけた。

    主人公の一人称の記述で「葉村晶の不幸の新たなバリエーションではないか。」とある。

    不幸の新たなバリエーションということは、今までいくつかの不幸な体験をすでにしてきたという自覚があるということなのだろう。

    そりゃそうか、さすがに自覚は持っていましたか。 

    不運の象徴はスマホ、何機壊したことだろう。

     

    重大と思われた謎を途中で解き明かしながら、物語そして葉村晶は進んでいく。

    それでもまた現れる謎。

    そのたびに主人公に傷が増えていく。

    病院内の場面がやけに多いのも当然といえば当然か。

     

    解決の場面はさらっと流して、エピローグにあたる部分で、オッと思った。

    やはり葉村晶の天職は探偵だと快哉を叫ぶ。

    次作「静かな炎天」も期待して読むことにしたい。

    アメトーークの読書芸人でも紹介されたし、このミスでも2位だったし。

    期待は裏切られることはないだろうという確信がある。

    「追跡者の宴」 集英社

    • 2017.01.15 Sunday
    • 21:22

    2015年5月に刊行が始まった『集英社 創業90周年記念企画「冒険の森へ」傑作小説大全全20巻の第18回配本。

    第1回配本が2点同時だったので、この本で19冊目の配本となる。

    とうとうここまで来たかという感慨がある。

    というのもこの叢書は1冊平均たぶん550ページ、ほとんどのページが2段組みというヴォリューム。

    読むだけならまだいいが、通勤途中でも読んでいたので、持ち運びに苦労したという思いがある。

    またこの本だけでいうなら昨年末から読み始め、年末年始の休みを挟んで2017年最初に読み終えた1冊ということができる。

     

    この本に収録されているのはショートショート&ショートストーリーが6編、短編が5編、長編が2編である。

    星新一の「復讐」や山本周五郎の「ひとごろし」など、印象に残っている短編やショートストーリーもあるが、やはり長編の2作品、特に「裸の町」を中心に取り上げたい。

     

    生島治郎による「男たちのブルース」。

    横浜を舞台に、帝国海軍のパイロットだった泉を主人公としたハードボイルド。

    主人公の不器用な生き方が、もどかしくもあり、よくわかる気もした。

    日本人はこういうのが好きなんだろうなと思いながら読み進めた。

     

    そして五木寛之の「裸の町」。

    これは正直、意外!と思いながら読んでくことになった。

    え、これってスペイン内戦がからんでほとんど逢坂剛じゃん、と思った。

    そんな小説を五木寛之が約50年前に書いていたなんて。

    先入観や思い込みは怖いなと思い知らされた。

    エンディングは途中から予想できたが、それでもやはり五木寛之がこういう作品を書くんだとうなった。

    直接ストーリーとは関係ないはなしだが、主人公の友人で耳尾秀介という登場人物がいる。

    作家の道尾秀介はこの登場人物からペンネームを付けたのかと思った。

    調べてみると、道尾は都筑道夫からとったらしい。

    また488,489ページの主人公を含む二人がロープに縛られて、そこから脱出する場面がある。

    この主人公の脱出の方法には驚かされた。

    私だけではなく、初出の際も評論家から賞賛されていると解題にあった。

    やっぱりそうだよなあ。

     

    「冒険の森へ」最終配本分はすでに昨年12月に刊行されている。

    今月中に読めるかな。

     

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